たとえば、学生時代に流行っていた歌謡曲や、小学校の校歌など、懐かしい音楽を聞くと、当時の記憶が鮮やかに呼び起こされて、そのことに伴う思いが再び心に広がることがありますよね。
それは「当時よく聞いていた音楽というエネルギーの振動」が、「当時の記憶というエネルギーを揺り動かす」こととなり、
深いところに眠っていたものを、再びアクティブにする作用があるためです。
この世には「時間」という変化のしくみがあり、常に、新たな経験が積み重なっていくことになります。
私たちは、それらを「記憶」として留めておくことができ、
必要に応じて「思い出す」こともできます。
けれど、経験は次々に増えるので、新しいものの刺激や記憶が優先され、古いものはうもれていきます。得た知識も、身につけた知恵も、あまり使われないものは、同様にうもれていくことになります。
過去の出来事について、「10年前は何をしていたかな」とか、「あのときは、どんなことがあったかな」と、事実として思い出すことはできても、そのときの心の動き、当時の自分は何を好んでいて、どんなことに関心をもっていたかまでは、簡単には思い出せないものです。
しかし、10年前の懐かしい音楽を再び聞いたなら、そうした細かい記憶や、心の動きが、躍動感をもって、自分の内側から「響いてくる」ようにわき上がってきます。
音楽を聞くことによって、しばらく使われずに眠っていた装置のスイッチが入れられたように、自分の中で再び「動き出す」という作用が起こるのです。
音がもつエネルギーの振動はそれだけパワフルで、過去の記憶と連動して自分の中に根づいているということですね。
ときどき過去の懐かしい音楽を聞くことは、深いところにうもれた状態になっていた、記憶、知識、経験値、スキルなどに、再び「動き」を与えて、
その当時の自分が体現していたエネルギーを、思い出させてくれます。
あまり使われていないもの、忘れていたものの中にも、今の自分に役立つ力となるものはたくさんあります。
自分のこれまでの経験の中に、そうしたたくさんの力が「ある」ことを再認識させてくれて、未来へ進んでいくための力を与えてくれるのです。
私の場合は、その音楽を聞いていた頃に、学校の先生や上司が教えてくれた知識、話してくれた言葉が思い出されることが多いですね。それらのひとつひとつが、今の自分に深く響き、なつかしく、ありがたい、という思いを深くしています。
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