被害者のままでいたい気持ちを,乗り越えていく。

変わりたい、幸せになりたい、と言いながら、心の中では、自分自身を変えたいとは思っていない方がいます。周囲の人や状況が、自分が望むように変わってくれることを願ってはいますが、今の自分を変えたいとは思っていないのです。

その多くは、心の中にかなりの「被害者意識」を抱えている方達です。そして、実はそこから「抜け出したくない」と思っている方達でもあります。

一輪の花を手にする少女

矛盾するように思えますが・・・、「今の状況から抜け出し、幸せになりたい」けれども、同時に「被害者でもいたい」のです。「被害者である状況は、手放したくない」気持ちがとても強いのですね。

例えば、親子関係がうまくいかず、幼少期に愛を得られなかった(と、本人は思っている)人がいたとします。そして、大人になるに至るまで、ずっと親を恨み続け、親が加害者で自分は被害者だという認識をもっています。

自分が過去の苦しみを乗り越えて完全に立ち直ってしまうと、「自分が損をして、親が(許されて)得をするじゃないか」という気持ちがあります。

もしもいつの日か、親が過去を悔やむ時が来かもしれないのに、その時すでに自分がすべてを乗り越えてしまっていたら、自分が「損」をしてしまう、自分がどれほど苦しかったか、どれほどに悩んだか、親に思い知らせたいというのに、その機会を自ら放棄するなんてとんでもない、と考えてしまうのです。

ですから、今の状況を変えたいと言いながら、「被害者である自分」というスタンスは守りたいので、自分を変えたいとは思っておらず、周囲や親に変わってほしい、または、今の(被害者であるという)自分を含めて丸ごと受け止めてくれる人と出会って癒されたい、と望んでいます。

しかし、他者との出会いも、「波長の法則」によってなされますから、同じ要因をもった人たちが集まっていくものです。

被害者でいたい人の周りには、やはり被害者でいたい、慰められたい人達ばかりが集まるもので、誰もが「得たい」「慰められたい」「私を認めて」と思っているので、結局その場の誰もが、満たされることがありません。

集まれば集まるほど、欠乏感ばかりがクローズアップされて、人間関係から楽しみや安らぎを得ることができません。

幸せになりたいのなら、やはり自分自身を変えていく、被害者である自分を乗り越えて、新しい自分になっていく、という強い意思をもっていくことが必要です。

乗り越えて幸せになったとしても、過去の苦労が消えて無になるわけではありません。過去の苦労はたましいの財産として、いつまでも存在し続け、むしろ、幸せな人生を歩む上での助けとなります。

苦労があってこそ、感性が磨かれていくからです。

実際に起こるかどうかもわからない、未来において、親が悔い改める日のために、いつまでも被害者を演じ続けている人生で、本当にいいのか。そうこうしているうちにも、どんどん時間は過ぎていき・・・、めくられたページは、戻ることはありません。

幼い頃の状況は、あなたがどうすることもできない「親の勝手な都合」であったとしても、今、すでに大人になったあなたが、「未だに、被害者でいることを望み、実際にそうしている」状況は、親が強要したものではありません。それは、あなた自身が選んで、手の中に握っている状況です。

このことに気づき、乗り越えるのは、容易ではありません。今まで、拠り所としてきたものを、手放すのですからとても苦しみます。

しかし、「そのまま」では、「ずっと、そのまま」になってしまう可能性もあります。この状況に当てはまる方は、どうか、じっくりと自分の心を見つめ直し、この先の人生をいかに生きていくかを、考えてみてはいかがでしょうか。

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